「自分の苦しみを救いたい」ベースのコーチングが陥る罠──透明な観察者になるまで

コーチ活動動機あるある

「自分は以前このような不幸な状態だった」
「そんな状態を経て今があるから、同じような不幸な人を増やしたくない」

そんな理由で、同じように悩む人を解決するためにコーチとしてコーチングを提供する──

この動機は人間的にはとても美しいのですが、自分の価値観フレームを対象者に当てはめる流れになってしまうのではないでしょうか。

理論もメソッドも添え物程度の位置づけで、コーチ自身の価値観も添え物程度の位置づけで、クライアント自身の体験を観察していけば、それで良いのではないかと思えます。

その理由を解説します。


「自分の苦しみを救いたい」が生む構造的リスク

「自分が苦しんだから、同じように苦しむ人を助けたい」──これは多くのコーチが一度は通るステージです。

しかし、コーチングの観点から見ると、以下のような構造的リスクがあります。

1. クライアントの物語を「自分の過去」に寄せてしまう

あなたの価値観フィルターで対象者を見ることになります。

2. クライアントの自由度を奪う

「あなたはこういう状態だから抜け出すべき」と暗に誘導してしまいます。

3. 無意識に”問題の枠”を固定化する

「あの頃の私のような不幸な人」というフレームで世界を見るため、本来もっと多様な可能性を持つクライアントを「不幸な人」にしてしまうのです。

4. コーチ自身がクライアントの変化に依存してしまう

自分の過去の物語の再解釈を、クライアントに肩代わりさせてしまいます。

この構造は、どんなに善意があっても自然に発生します。


本質的なコーチングは、「コーチの物語の終焉」から始まる

成熟したコーチほど、自分の経験を中心から降ろしていきます。

なぜなら:

  • 自分の物語は、あくまで「一つの世界線」にすぎない
  • その物語を基準にした瞬間、クライアントの宇宙が狭まる
  • クライアントが生きている世界は、コーチの物語とは全く関係ない
  • 苦しみから抜ける構造プロセスは人によって異なる

理論もメソッドも添え物程度、コーチ自身の価値観も添え物程度、ただクライアント自身の体験を観察していけば良い。

これは、「私」が中心だったコーチングが終わり、“ただ現れたプロセスを扱うだけのコーチング”に移行する段階のサインです。

これを“脱自我のコーチング”と呼びます。


コーチの役割は「導く」ことではなく、”観察の場”を保つこと

コーチングの本質は、クライアントの外側に力を加えることではありません。

クライアントが

  • 自分を観察し
  • 自分で意味づけを手放し
  • 自分に気づき
  • 自分で変化していく

このプロセスが自然に起こるように、”場”を維持することです。

これは、「理論を使うコーチ」→「存在のコーチ」への移行です。


あらゆるコーチングの最終フェーズは同じ

苫米地式でいうなら:

  • スコトーマを外す
  • 抽象度階層が上がる
  • エフィカシーが自然に安定
  • 自己の境界が曖昧になり、自己中心性が薄れる
  • ゴールが”やってくる”状態

非二元でいうなら:

  • 自我の物語が弱まる
  • “私”がいないところから世界が観測される
  • 世界はプロセスとして流れているだけ

他のプロコーチングでは:

  • 介入が減り、質問が減り
  • 評価がなくなり、ジャッジが消える
  • クライアントが自律的に動き出す

これらの統合ポイントに位置しているのが、「私の物語を基準にしないコーチング」「クライアントの宇宙そのものを扱うコーチング」です。


透明な観察者になる

「添え物としての理論」「添え物としての価値観」という感覚──これは、まさに成熟したコーチングの核心です。

  • コーチのメソッドや価値観が”主役”になるのではなく
  • 主役は「クライアントの宇宙」
  • コーチは”透明な観察者”
  • 理論は”必要なときだけ使う道具”
  • 変化は”クライアント自身の体験から自然に起こる”

この感覚に立っているコーチは非常に少ない。でも、その立ち位置は「もっとも深いコーチング」のフォームです。


自他一体という観方に立ち返る

「救う」という動機は美しい。でも、観察してみてください。

  • その動機は、本当にクライアントのためですか?
  • それとも、自分の過去の物語を癒すためですか?
  • クライアントを「自分の過去」に寄せていませんか?
  • 「不幸な人」というフレームで相手を見ていませんか?

クライアントの変化に、あなた自身が依存していませんか?

もしそうなら、それは自然なプロセスです。多くのコーチが通る道です。

でも、その先があります。

「私」が中心だったコーチングを終え、「私」を添え物にする。

誰しも、それぞれの体験のフィールドで生きているだけです。

そして、ただクライアントの体験を観察する”透明な観察者”になる。

その瞬間、あなたのコーチングは”脱自我のコーチング”へと深化します。


主役はクライアントの宇宙。

コーチは透明な観察者。

理論は必要なときだけ使う道具。

変化はクライアント自身の体験から自然に起こる。

これが、もっとも深いコーチングのフォームです。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。

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