「こうなったらいいのに」の奥にあるもの──抽象度が願いの性質を変える

現状の延長線上の願い

「こうなったらいいのに」と思うこと、ありますよね。

「もっと収入を増やしたい」「パートナーに理解されたい」「時間に余裕がほしい」──これらは自然で健全な願いです。

でも、気づいていますか? これらの願いは、たいてい現状の延長線上にあります。

そして、いくら叶えても、次の「こうなったらいいのに」が生まれ、永遠に「満たされないサイクル」を回り続けるのです。


願いは生きる衝動そのもの

まず理解したいのは、人間の脳は構造的に常に”よりよい状態”をシミュレーションする装置だということです。

  • 少し喉が渇けば「水が飲みたい」と思う
  • 人に冷たくされれば「理解されたい」と思う
  • 静かな時間が欲しければ「休みたい」と思う

これらすべて、「こうなったらいいのに」という”微細な願い”です。つまり、願いとは生きる衝動そのもの

それを完全に止めることは、生命としての動きを止めることでもあります。

だから、願いを否定する必要はありません。ただ、その願いの”もっと奥”を見る必要があるのです。


抽象度という観点がもたらす転換

コーチングの核心の一つは、「抽象度を上げると、見える世界(スコトーマ)が変わる」というものです。

低い抽象度:
個人的・具体的・物質的な関心(お金・地位・健康・人間関係など)

高い抽象度:
概念的・全体的・非個人的な視点(自由・愛・成長・貢献・調和など)

つまり「抽象度」とは、どれだけ広い文脈の中で自分を観ているかという指標です。


「こうなったらいいのに」は現状の中の不満

人が「こうなったらいいのに」と思うとき、その願望はたいてい現状の延長線上にあります。

  • 「もっと収入を増やしたい」
  • 「パートナーに理解されたい」
  • 「時間に余裕がほしい」

これらはどれも「現状の中の不満」を改善する方向に発想されています。

言い換えると──「今の自分」が前提になっているのです。

そのため、いくら叶えても、次の「こうなったらいいのに」が生まれます。これが、満たされないサイクルの正体です。


抽象度を上げると願いの性質が変わる

抽象度を上げるとは、自分という存在をより広い文脈の中で捉え直すこと

例えば:

  • 「収入を増やしたい」→「自分の表現を通じて、豊かさを循環させたい」
  • 「理解されたい」→「誰もが安心して本音を語れる場を創りたい」
  • 「時間がほしい」→「時間の感覚すら超えて、充足の中で生きたい」

ここで気づくのは、抽象度が上がるほど”自分のため”という感覚が薄まることです。

この変化が「利他」や「自己中心性の消失」に繋がります。つまり、「自分の願い」が「全体の動き」へと昇華されるのです。


願いと現実の境界が曖昧になる

さらに抽象度が高まると、「願う」ことと「起きている」ことの区別がなくなってきます。

「こうなったらいいのに」と思う前に、“すでにそうである”という臨場感が生まれるのです。

例えば、「人が自由である世界を生きたい」と強く願っているとき、実際にはその人の言葉・表情・在り方が、すでに「自由を体現している状態」になります。

このとき、外側の現実が変わるよりも先に、内側の情報空間(臨場感の中のリアリティ)が変わります

その結果、「願いが現実化する」ように見えるのです。


ゴールは抽象度を引き上げる装置

ここでゴール設定の真意が出てきます。

ゴールは「実現するため」ではなく、「自分の抽象度を上げ続けるため」に設定する。

だからこそ、「現状の外」であり「複数」であり「利他的」な条件が必要なのです。

低い抽象度の願い(お金・評価・恋人)だけに集中すると、スコトーマ(心理的盲点)で他の可能性が見えなくなります。

しかし高い抽象度のゴールを同時に持っていると、現実の中の”偶然”や”直感”がつながり始める。

これがいわゆる「引き寄せ」や「シンクロニシティ」と呼ばれる現象の本質です。


抽象度を上げる体感プロセス

理論的に理解しても、抽象度の変化は体感でしか腑に落ちません

プロセスとしては次のように進みます:

1. 現状の願いに気づく
「自分はいま、何を”こうなったらいいのに”と思っているのか」を書き出してみる。

2. その願いの奥の願いを探る
「それが叶ったら、自分は何を感じたいのか?」→安心?承認? 自由? 愛?

3. さらに抽象化する
「その感覚を、他の誰かも感じられる世界とは?」→個人願望が「世界観」へと変わる瞬間。

4. “すでにそうである”臨場感を育てる
ゴールを達成した”世界の自分”として日常を観る。ふとした瞬間に、今の現実と願っていた未来が重なって見える。

この体験を繰り返すほど、「願いが現実を引き寄せる」のではなく、「現実が願いの一部として見えてくる」ようになります。


まとめ:欠乏から充足へ

抽象度が低いと、願いは「欠乏」から生まれる。
抽象度が上がると、願いは「充足」から溢れる。

「こうなったらいいのに」と思うたびに、それを否定する必要はありません。

ただ、その願いの”もっと奥”にある意図──「何を本当に感じたいのか?」に気づくことで、あなたの抽象度は確実に上がります。

そして抽象度が上がれば、満たされないサイクルから抜け出し、充足の中で生きることができるようになるのです。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。

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