自己犠牲か、自己拡張か──「利他的ゴール」の本当の意味

自己の境界を拡張する
「利他的なゴールを持て」と聞いて、自分を犠牲にして誰かのために尽くすことだと思っていませんか?
実は、これはコーチングにおける誤解の一つです。利他とは自己犠牲ではなく、他者の世界を自分の世界に含めること──つまり、自己の境界を拡張する行為なのです。
なぜ「複数の利他的ゴール」が必要なのか
コーチングにおけるゴールとは、「現状の外側にある、心から望む未来の自己像」です。つまり、自我(現状の枠)を超えて、自分という存在を再構築するための設計図です。
そして、この”自我を超える”という性質上、ゴールは必然的に複数でなければなりません。
なぜか? 一つのゴールに執着すると、そのゴールが新たな現状になってしまうからです。
一つのゴールの危険性
一つのゴールしか持たない状態は、意識が一点集中している状態です。すると、脳は「この一点を守る」ように機能し始め、そこに恐怖や依存が生まれます。これがホメオスタシス(現状維持機能)の罠です。
一方で、複数ゴールを持つと意識は多方向に拡張します。これにより、一つがうまくいかなくても他で成長が続くため、心理的自由度が高まり、恐怖や執着から解放されます。
複数ゴールとは、意識の分散ではなく、意識の統合による自由な在り方を作るための設計なのです。
「利他」が条件である本当の理由
ここで最も重要な誤解を解きましょう。
意外と多くの人が「利他=人のために自己犠牲をする」と考えています。しかし、コーチングではまったく逆です。
利他とは、”他者の世界を自分の世界に含めること”です。
- 道徳的な善行ではなく、自己の抽象度を上げる行為
- 他者の幸福や自由を、自分のゴールの一部として取り込む
- 結果、自己が拡張し、自我の境界が薄くなる
これにより、「私」中心の狭いゴールから脱し、社会・宇宙規模でのビジョン(高次自己)へとアクセスできるようになります。
利他的ゴールは、”自我の溶解”を促す心理的デバイスなのです。
段階的に腑に落ちていくプロセス
この理解は、理論だけでは腑に落ちません。実際に体験を積み重ねることで、徐々に実感として育っていきます。
段階1:一つのゴールへの執着を自覚する
最初の段階では、多くの人が「これさえ叶えば幸せ」というゴールを立てます。しかし進むうちに、「達成の恐れ」や「停滞の違和感」が生まれます。
体感上の兆候:
- うまくいかないと落ち込む/焦る
- ゴールの実現を”結果”で評価しようとする
- 他のことに興味が持てなくなる
ここで初めて、「一つのゴールに囚われていた」と気づくのです。
段階2:関連領域のゴールを増やしてみる
例えば「コーチとして成功したい」というゴールを持つなら、その周辺に「健康」「家族」「創造性」「学び」「コミュニティ」など、異なる次元のゴールを設定していきます。
すると、エネルギーが分散するどころか、むしろ全体が支え合って動き始めます。ある分野の充実が他分野に波及することを実感します。
体感上の兆候:
- 焦りが減り、自然体で行動できる
- 複数の活動が連鎖的にシンクロし始める
- 「生きていること自体がゴールに向かっている」感覚が芽生える
段階3:利他的視点の芽生え
ゴールを持ち続けると、ある瞬間に「自分のためだけでは限界がある」と感じ始めます。他者の幸せ・自由・成長を願うことで、自分の内側が拡張していく実感が生まれます。
このとき、他者を助けようと”努力する”のではなく、他者の幸福が自分の幸福として感じられる状態になります。これが本当の利他です。
体感上の兆候:
- 与えることが自然になる(打算的でない)
- 他人の成功を自分事のように喜べる
- 自分の存在が「誰かの世界を広げている」と感じる
段階4:多次元的ゴールの統合
最終的には、複数のゴールが「バラバラの夢」ではなく、一つの大きな存在表現として統合されていきます。その人の在り方そのものがゴールになります。
ここに至ると、もはや”達成”ではなく”表現”として生きるようになります。仕事も趣味も対人関係も、すべてが同じベクトル上に存在します。
体感上の兆候:
- 「やる・やらない」の区別がなくなる(自然に動く)
- どんな出来事もゴールへの素材として見える
- 周囲への影響が無意識に広がる
結論:利他は自己拡張の道
「複数・利他的ゴール」とは:
- 目標を増やすためのテクニックではなく
- 自己の境界を広げる意識の訓練であり
- 最終的には「存在としての自由」を得るための道です
利他を自己犠牲と捉えている限り、それは道徳的な義務感に過ぎません。しかし、利他を「他者の世界を自分の世界に含める」自己拡張として理解すると、それは自由への道になります。
「私のため」と「他者のため」が分離しない状態。これが、コーチングにおける利他的ゴールの本質です。
自己犠牲ではなく、自己拡張。義務ではなく、自由。この転換が、複数の利他的ゴールの真の力を解き放ちます。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。
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