「スコトーマを外せば成功する」は誤解──RASが教える情報空間の再構築

認知構造そのものを再設計する

「スコトーマを外せば成功する」「RASを書き換えれば願いが叶う」──そんな説明を見聞きしたことはありませんか?

実は、これらはコーチングにおける最も重要な概念の一つでありながら、最も誤解されやすい理論でもあります。スコトーマとRASは、単なる願望実現テクニックではなく、認知構造そのものを再設計する中核メカニズムなのです。


スコトーマとは何か?

「スコトーマ(scotoma)」は、もともと医学用語で視覚の盲点を意味します。コーチングでは、これを心理・認知の盲点として拡張して使います。

簡単に言えば、「自分の認識に入っていないものは、そもそも存在していないように感じる」という状態です。

具体例を挙げましょう。

  • 欲しい車を買った途端、街中でその車ばかり目に入る
  • 新しいことを学び始めたら、急にそれに関する情報があちこちで目に飛び込んでくる
  • 批判には敏感なのに、褒め言葉は耳に入らない

これらは、すべてスコトーマの変化が起きている例です。情報自体は以前から存在していたのに、認識のフィルターが変わることで「見える・見えない」が変わるのです。


RAS(網様体賦活系)という情報フィルター

人間の脳は、膨大な情報を処理しきれません。そのため、「何を見るか」を自動的に選別しています。その選別を担うのがRAS(Reticular Activating System:網様体賦活系)です。

RASは脳幹にある情報のフィルター機構で、あなたの意識に上がる情報は、このRASによって「重要だ」と認識されたものだけが通過します。


ゴールがRASの基準を決める

ここがコーチングで最も重要なポイントです。

RASは”ゴール”を基準に情報を通すのです。

つまり、あなたのコンフォートゾーン(快適領域)がどこにあるかによって、RASは「見る・見ない」「聞く・聞かない」「気づく・気づかない」を決めています。

構造を整理すると:

ゴール → 重要性判断の基準 → RASのフィルタ → 意識に上がる情報

例えば、「今の職場で頑張る」がゴールの人は、転職や独立に関する情報がスコトーマに隠れて見えません。一方、「自分の可能性を最大限に表現する人生」がゴールの人は、新しい学びや未知の挑戦の情報が自然と目に入ります。


よくある誤解を解く

誤解1:「スコトーマを努力で外す」

スコトーマは努力や意志の力で外すものではありません。未来のゴールの臨場感によって、自然に外れるものです。無理に「見よう」とするのではなく、ゴールの再設定によってRASの基準自体を変えるのです。

誤解2:「RASの書き換えは願望実現テクニック」

RASは心理的操作の道具ではありません。これは自己の情報空間を再設計する中枢機構です。「引き寄せ」のような外界操作ではなく、認知構造そのものの変化を扱っています。

誤解3:「スコトーマは悪いもの」

スコトーマは必要な選別機能です。全ての情報が見えてしまうと、脳は過負荷になります。問題は「どの基準でスコトーマが形成されているか」であり、スコトーマの存在自体ではありません。


現状の外のゴールがスコトーマを外す

コーチングでは、「スコトーマを外すこと」が最重要テーマの一つです。なぜなら、現状の中で見えている選択肢は、あくまで現在のコンフォートゾーン内での可能性に過ぎないからです。

しかし、「現状の外のゴール」を設定すると、そのゴール達成のために必要な情報が、これまでスコトーマに隠れていた領域から浮かび上がってきます。

実際に起こる変化としては:

  • 出会う人の質が変わる
  • ふとしたアイデアが浮かぶ
  • 選択や判断の基準が自然に変わる
  • 「偶然のような必然」が増える

これらは、RASの再設定が起きている証拠です。


実践のための3ステップ

  1. 現状の外のゴールを設定する
    現状内のゴールではRASの基準が変わりません。
  2. 未来の自分の臨場感を高める
    「未来の私は何を”当然”と感じているか?」を感じてください。
  3. その未来視点で今を見る
    スコトーマがズレ、現状の外に気づく情報が現れ始めます。

まとめ:見ている世界は仮想現実

概念機能コーチングでの意義
スコトーマ情報の盲点現状の外を阻む”見えない壁”
RAS情報の取捨選択フィルターゴールによって再設定される
ゴール設定未来の臨場感でRASを書き換える現状の外へのスコトーマ外し

スコトーマ理論が腑に落ちると、「自分が見ている世界は”現実”ではなく、”RASを通した仮想現実”だ」ということが体感としてわかってきます。

そして、ゴールを変えること=世界の見え方を変えることだと実感するようになります。

これは願望実現の話ではありません。認知の再設計、情報空間の再構築という、極めて実践的な理論なのです。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。

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