「現状の奥」に気づくための外側の検証②

40代直面期いろいろ

40代に入ってすぐ、私は深刻なアイデンティティ危機に直面しました。ちょうどそのタイミングで出会ったのが「現状の外にゴールを設定する」というコーチング理論でした。それは劇的でした。

どうしても本格的に学びたくて、それまでの現状の人たちと離れて、そこからダイブして飛び降りるように認定コーチになった。未知だろうが、経験がなかろうが、かつての自分なら「やらない」と判断していたことでも、とにかくやった飛び込んだ。

しかし、ある日気づいたのです。私は「成功したい」という外側の変化を求めて走っていただけだったのだと。「現状の外のゴール」を崇高な成功法則と捉え、絶対視していた。そのことに気づいたとき、再び深いアイデンティティ危機に襲われました。そのショックで二日間、文字通り寝込みました。

けれども、その二日間は無駄ではありませんでした。自分という器の中が「現状の外にゴールを設定しなければならない」という概念でいっぱいだった状態から、その概念を取り出すことができたのです。器に新たな空間ができたとき、私は初めて気づきました──「既に目の前にあるのに認識していなかった豊かさ」に。


すでに満たされていた現実

あれほど「現状のアイデンティティ危機だ」と苦しんでいたのに。現状の不足感を満たすための現状の外のゴール達成を目指し続けることに、どこかで息苦しさを感じていたのに。実は、私はすでに豊かさに満たされていたのです。

そこから「現状維持は衰退」とか「うだつの上がらない人は現状の外にゴールを設定していないからだ」とか「抽象度の高いゴールを設定しているから自分は凄いんだ」といった価値観が、そんなのどちらでもよくなりました。

そして私は、現状を身に沁みて味わい始めました。自分の在り方が深く根付いていき、地に足のついた存在の深度が増していく感覚がありました。私はこれを「現状の奥」と名づけることにしました。定義していきましょう。


「現状の奥」とは何か

「現状の外」という言葉があります。それは、自分の現在の延長線上にはない大きな未来や目標を掲げること。思考の枠を壊し、新しい可能性にアクセスするための強力なツールです。

一方、「現状の奥」とは、今この瞬間の自分や日常を深く味わい、表面的には見えなかった豊かさ、つながり、本質に気づくことです。現状の”奥行き”に潜むものに、臨場感を持つ在り方と言えるでしょう。

「現状の外」=”まだ見ぬ未来”への挑戦
「現状の奥」=”すでに在る今”の深まり

この二つは、対立するものではありません。むしろ補い合う、両輪のような関係です。


現状の奥にのめり込んだ日々

私が現状の奥を認識して深めていた時期、ブログやSNSでの情報発信を完全にストップしました。外側へのアピールよりも、深く沈み込み、本来の自分を取り戻していくことに魅力を感じていたからです。

その中で認識したのは、何かしら気になったことを「こうなってやる」という外側のコントロール欲求なしに、能動的かつ流れに委ねながら行動すると、予想すらしていなかった事象を体感できるということでした。現状の自分の想像を超えた展開が、自然に起こるのです。

それでもなお、これまで生きてきた中で培われた一般的な価値観は、まだ強固に残っています。現状の外へ踏み出して活躍している人を羨ましく思ったり、価値観の合わない人に反応的になったりすることもあります。俯瞰的に「あぁ、人間らしさの証だな」と捉えられますが、完全には無くなりません。

けれども、現状の奥を深めていくことで、羨望、貪欲、権力といったものに心を乱されにくくなっていきました。現状の外のゴールを絶対視していなくても、能動的かつ流れに委ねながらやりたいことをやり続けているので、偏らず中庸的にバランスよく生活できています。ジワッと、素晴らしい日々だと感じています。


深く根を張るような在り方

「現状の奥」という概念には、いくつかの層があります。

一つは、深く根を張るような在り方です。外に向かう拡張ではなく、内に向かう統合。自分という存在の基盤を、しっかりと地面に根づかせるイメージです。

もう一つは、共鳴や循環を生む在り方です。ゴールというより「振動」や「場の質」を育てること。自分という存在が発する波動が、周囲と調和しながら広がっていく感覚です。

そして、プロセスそのものをゴールとする視点。変化の”結果”よりも、変化の”あり方”に価値を置くということです。


「現状の外」と「現状の奥」の両輪

「現状の外ゴールを設定する」が悪いわけではありません。むしろ無限の可能性を拡げる素晴らしいことです。それは確かに、思考を広げ、新しい世界へ踏み出すための有効な手段です。

ただし、それを絶対視してしまうと、未来ばかりに意識が飛び、「今ここ」を見失いやすくなります。現状の不足感を望む未来展望で抑え込み苦しさを感じることもあるかもしれません。ゴールを持たない自分を否定するループに陥ることもあります。

一方、「現状の奥」にも注意点があります。奥に沈み込みすぎて、外への挑戦や変化を避けてしまうこともあるのです。能動的に「やる」ことで、抽象度の低いこの物理空間で実際に体感するのです。やらなければ実際のところはそのままです。

本来、この二つは対立するものではなく、両輪です。

奥を深めるほど、外に広がる未来も自然に生まれる。
外に踏み出すほど、奥の豊かさにも気づける。

自然に生まれたなら好奇心を持って能動的にやればいいし、奥の豊かさに気づいたなら静かにジワっと深く根付かせていけばよい。

「現状の外」は未来に向かって”広がる”ベクトル。「現状の奥」は今ここを”深める”ベクトル。どちらも必要で、どちらも美しい。


あなたはどちらに偏っていますか?

もしあなたが今、「現状の外のゴール」に惹かれ、必死に走り続けているなら、一度立ち止まってみてください。「奥」という言葉を認識することで、ゴール設定のメタ認知が始まります。未来への過剰な逃避を緩め、今ここからの自然な変容につなげることができるかもしれません。

逆に、もしあなたが内側ばかりに目を向けて、外への一歩を恐れているなら、「現状の外」という視点を思い出してみてください。深く根を張ったあなたなら、きっと大きく枝を広げることができるはずです。

大切なのは、偏らないこと。両方を行き来しながら、自分にとってのバランスを見つけていくことです。

あなたの人生は、未来にも、今ここにも、同時に存在しています。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。

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