「現状の奥」に気づくための外側の検証①

若い世代を観察して気づく

「現状の外にゴールを設定せよ」「でっかい夢を持て」──こうした言葉に、あなたはどんな感情を抱くでしょうか。高揚感でしょうか、それとも少しの疲労感でしょうか。

1990年代から2000年代にかけて、自己啓発やコーチングの分野では「大きなゴール」を掲げることが、人生を変える鍵として語られてきました。しかし今、特に若い世代を観察すると、彼らは必ずしもそうした「意識の高い目標設定」に共鳴していないように見えます。むしろ日常の小さな幸せや、仲間との充実した時間、推し活やコミュニティへの帰属といった、等身大の価値観を大切にしているように感じられます。

では、「現状の外のゴール」という概念そのものが古くなったのでしょうか。それとも、ある特定の世代にとってのみ有効なマーケティング装置だったのでしょうか。


40代以上が「大きなゴール」に惹かれる構造

まず、なぜ40代以上の世代が「現状の外のゴール」を求めやすいのかを整理してみましょう。

この世代は、高度成長期やバブル期の影響を受け、「出世=成功」「大企業に入る=安定」という明確な外的ゴールが存在する時代を生きてきました。氷河期世代もその価値観を浴びながら育っています。

しかし、終身雇用の崩壊やリストラの波によって、その従来の目標が揺らぎ始めます。すると今度は「組織ではなく個人として、自分の夢やビジョンを持とう」という新しいマーケティングが台頭しました。

つまり、かつては会社や肩書きに依存していたアイデンティティが、組織の弱体化とともに宙に浮いてしまった。そこで「もっと大きなゴールを掲げることで、自分の存在意義を取り戻そう」という心理が働きやすくなったのです。これは決して悪意のある構造ではありませんが、ある種の時代的な必然だったと言えます。


Z世代が「大目標」に冷静な理由

一方、今の若い世代──いわゆるZ世代は、まったく異なる環境で育っています。

彼らはコロナ禍、気候変動、AIの台頭といった不確実性を肌で感じながら生きてきました。そのため「10年後の壮大なビジョン」よりも、「今この瞬間をどう生きるか」にリアリティを感じています。SNSやサブカルチャーの影響もあり、「推し活」や「趣味の充実」「仲間との時間」といった小さな幸せが、彼らにとっては十分に価値のあるゴールなのです。

また、この世代は大企業や富や成し遂げるだけが成功ではない、という多様な価値観を最初から知っています。だから「でっかい目標=幸せ」という前提そのものが、彼らにとっては自明ではありません。


「現状の外のゴール」を絶対視する偏り

ここで重要なのは、「現状の外にゴールを設定する」こと自体が悪いわけではない、ということです。それは確かに、意識の枠を広げる強力な手法の一つです。今の延長線上では息苦しいとき、新しい視点を開いてくれる「薬」のような存在になります。

しかし、それを人生の必須条件として絶対視してしまうと、いくつかの偏りが生まれます。

まず、「ゴールがない自分はダメだ」という不足感に陥りやすくなります。常に未来に意識が向いてしまい、「今ここ」を味わう余裕が失われる──いわば未来中毒の状態です。また、他人の「現状の外」と自分を比較し、劣等感を抱きやすくなります。さらに「ゴールがあるからイキイキする」という依存状態に陥ると、そのゴールを失ったときに深い空虚感に襲われることもあります。

本来、ゴールとは「設定するもの」というより、生きているうちに「ふと見えてしまう」「湧き上がる」側面も大きいものです。それを無理に掲げ続けることが、かえって生きづらさを生むこともあるのです。


世代を超えて響く、もう一つの視点

では、今の若い世代が40代以降になったとき、彼らもまた「現状の外のゴール」を必要だと感じるようになるのでしょうか。

答えは「必要だと感じる人もいるが、全員ではない」だと思います。

確かに人生の中間地点に差し掛かると、「このままでいいのか」という問いは誰しも抱きます。しかし今の若い世代は、多様性を受け入れて育ち、変化に慣れています。彼らが中年期に迎える揺らぎは、昔の世代とは異なる形で現れるでしょう。「大きな夢で埋めよう」ではなく、「小さなリアルな幸せをもう一度見直そう」という方向に向かう可能性が高いのです。


未来と今ここのバランス

結論として、「現状の外のゴール」は強力な発想のストレッチ法ですが、それを絶対視するのは偏りすぎています。むしろ「今ここを満たすことから自然に広がる未来」とのバランスで捉えるほうが、人に無理がなく、持続可能です。

未来の理想と今ここの満足感は、本来、「静」と「動」の両輪で駆動するのです。どちらか一方に偏ると、未来に逃げたり、逆に現状に閉じこもったりしてしまう。大切なのは、自分にとってちょうどいいバランスを見つけることです。

「現状の外のゴール」という言葉に息苦しさを感じているなら、一度立ち止まってみてください。それは本当にあなた自身が望んでいることでしょうか。それとも、誰かのマーケティングに乗せられているだけかもしれません。

あなたの人生は、あなた自身が決めていい。そんなよくあるメッセージを、再度フラットな状態を意識したうえで感じてみてください。そのことを、どうか忘れないでください。

次回は、「現状の奥」に気づき深めていく観点について投稿します。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。

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