現状打破は「嫌な感覚」との同居から始まる

多くの人は、不快な感情や身体感覚を「避けるべきもの」として扱います。
焦り、虚無感、怒り、無力感──これらは生きづらさの象徴のように見え、できるだけ早く解消しようとします。
現状に縛られて動けない人ほど、この回避傾向は強まり、目先の快や安心を求める行動が無意識に繰り返されます。
しかし、心理学や神経科学の視点から見ると、不快は単なる邪魔者ではありません。
それは、神経系が「今のあなたの枠組みでは処理しきれない現実」に直面しているサインであり、新たな認知・行動パターンを形成する契機でもあります。
不快を回避すれば、一時的には楽になりますが、根本の構造は温存され、同じ制限が何度も再生されることになります。
私たちの脳は、予測と現実の差異──「予測誤差」──に基づいて学習します。
不快感はまさに、この予測誤差が生じている瞬間に現れる信号です。
その信号を十分に感じきることで、脳は既存のモデルを更新し、新しい現実に適応し始めます。
とはいえ、「味わい切る」とは、ただ不快の中に溺れ続けることではありません。
重要なのは、意識を保ちながら、その感覚を評価せずに観察し続けることです。
身体感覚としてはどこに現れているか、温度、圧迫感、動きの有無──そうした質感に注意を向け、逃げたい衝動さえもそのまま見守る。
マインドフルネスや内観法が有効なのは、この観察姿勢を保つための訓練になるからです。
私自身も、かつては「不快は消すべきもの」という前提で生きていました。
新しい理論を学び、目標を設定し、行動を増やしても、心の奥底にある不安や劣等感は形を変えて戻ってきました。
そんな中、ある時期に意図的に“不快を避けない”生活を試みたのです。
怒りが湧いたらその熱さを、孤独を感じたらその冷たさを、全身で感じながら日常を送る。
すると、不快は徐々に「敵」ではなく「変化の入口」として知覚されるようになりました。
不快を味わい切ることは、現状の檻を壊す最短の道ではありません。
しかし、それは確実に「檻の鍵」を見つける道です。
現状に縛られている人ほど、不快を抱えたまま一歩踏み出すことで、感覚世界と行動範囲が静かに拡張していきます。
避けるのではなく、最後まで感じきる。
そこに、予測できなかった新しい自分が待っています。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。
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